うそつき男と箱入りクール


とある電車内にて

車内放送が次の停車駅を告げ程なく電車は減速をはじめる。


「男、ちょっと質問があるんだが」
抑揚の無い声が頭上から聞こえた。
先ほどまで運転席を覗いていたはずのクーがそこにいた。

『なんだいクー?ここで答えられるような事なら答えるよ』
読みかけの本を閉じつつやんわりと防衛線を張る
事、公共の場において彼女の質問は刺激が強すぎるのだ。

「駅の近くになるたびに聞こえてくるビープ音はなんなのだ?」
今回はきわどい話題ではないようだ。

最近の電車は停止位置の誘導に電子音が鳴るものがある
音の間隔で減速位置をしらせるのだ。
それを踏まえた上で僕はウソをつく

『それはねクー、後続の列車からのミサイルロックだ』
自分で言うのもなんだがあんまりなウソである。
彼女の答えを待たずに先を続ける。
『日本の運行ダイヤは世界に類を見ないほど正確なのは知っているだろう?』

「それがなんでミサイルにつながるんだ?」
彼女は普通に返してきた
疑ってもいないが特に驚いてもいないという感じだ。

強敵である。

『クー、電車が止まるとどうなる?』
真顔で質問を掛ける

「困るな」
真顔で即答する彼女
やはり手強い。

『なら電車を止めない為にはどうすればいい?』
まだだ!僕の優位は揺らいじゃあいない!!

「そこでみさいるなのか?」
彼女はかすかに目を見開く。
いったい彼女の脳内でどんなシナプスの連結が有ったのだろうか?

『そうだ!!駅で停車している間にも後続の電車は距離を詰めている
 もし追いついてしまえば緊急停止なんてことになってしまう、じゃあどうするのか?』
このまま畳を掛ける
「どうするんだ?おとこ」。
年上の彼女は目を輝かせいつもより幼く見える。

『そこでさっきのビープ音なんだあれは後続の列車からレーダー照射を受けると鳴り出す
 ロックされると音の間隔が早くなるそしてミサイルが発射されると連続音になる。』
一息に喋り切る。
だが…
「まてまておとこ。私を箱入りだと思ってかついでいるな?」
くそっ 復帰が早いな。
だんだんと旗色が悪くなる。

『事実だ。』
ウソである。
だが悟られるわけにはいかない。

「そのわりにはほかの乗客が騒がないな」
彼女は冷静に切り返してくる。

『これが日常だからさクー。券売機で切符を買った時、もしくはパスモで改札をタッチした時に
 運転手と車掌に命を預けてるんだ。みんな知ってるから騒ぎなんて起きやしないんだ』
こちらも冷静に切り返す。
まだ焦るような時間じゃない。

「だがそんな話は初耳だぞ?第一前のを列車をミサイル攻撃したら進路が塞がれてしまうじゃないか!」
もっともだ。
心の中で同意しつつ切り返す。

『そこは各鉄道会社の腕の見せ所なんだ。運転手は後続の気配を車両越しに感じペースを見切る。
 車掌はミサイルが発射されれば直ちにチャフ、フレアを射出してECMを作動させる。
 広報は各関係機関への欺瞞工作だ。』
ねーよwww

「なんと!」
のりきったか?

またビープ音が鳴り出す。


『話しているうちにもうすぐ次の駅だぞクー?』
今度こそたたみきる。。

「どうするんだ!男!!」
珍しく焦る彼女。

『クー、この電車の運転手は旧国鉄時代から西部戦線で戦ってきたエースだ。
 安心して見学してくるといい』
ここで最後の大嘘だ。

「わかった男!行ってくる」
うれしそうに彼女の後姿を見送りつつ僕はやり遂げた達成感と罪悪感に苛まれていた。
いったいどこで引き際をまちがえたのか?


終われ

動画 アダルト動画 ライブチャット