「今頃クーは結婚式か……」 俺はガラにもなく、窓越しの青空に向かってため息をついた。 ベッドに仰向けに寝そべりながら、ぼんやりと空を見上げる。 クーのすらっとした体には、きっと純白のドレスが映えるだろうな。 いや、どんな色でも、どんな形でも、彼女に似合わないものはないだろう。 俺はクーの姿を思い出し、裸体を思い出し、芋づる式に昨夜の情事を思い出した。 バーンと扉を開け、今みたいに歩み寄って、そうそうこうやって俺にまたがって…… 「ってクー!?」 「やあ男くん。込み入った話だが一言で言うと、君と結婚したい」 「け、結婚!? ちょ、式は!? 会社は!?」 「式に参列していた大手の社長が父と気が合ってな。契約を結んでくれた。結婚相手も複雑な事情があったらしく、婚約を解消してくれた。家内安全、商売繁盛。ご都合主義も真っ青の展開だ」 理解が追いついていないが、とりあえずクーが他の誰かのものにならなくていいのは、わかった。 俺が安堵感に浸る間もなく、クーは矢継ぎ早に続ける。 「だから男くんと結婚したい。私の夢は、男くんと毎朝おはようを言って、毎晩セックスすることだ。再度言う、結婚してくれ」 クーは四つんばいのまま身を乗り出し、俺に顔を近づけた。 無表情だが、それゆえに迫力がある。 「……俺の夢は、もう敗れたけれどね」 クーの目がわずかに見開かれた。クーの睫が不安げに揺れる。 俺はクーの肩を押してベッドの上に座らせ、俺も向かい合って座った。 クーの目を見つめ、真顔になって言う。 「俺の夢は、クーにプロポーズすることだった」 クーが俺に飛びつき、二人一緒にベッドに埋もれた。 「男くん、好きだ。愛している。大好きだ。一生好きだ」 「俺もだよ、誰よりも、クーが大好きだ」 俺たちは横になったまま、深い口付けを交わした。 俺とクーの結婚届が出されたのは、三日もたたない内だった。 |