「まぐわい、という言葉を先日小説で読んだのだが、これはどういう
 意味の言葉なのだ、和明?」
 俺は飲んでいたコーラを盛大に噴出した。
 ……何を聞いてくるんだこいつは。
「何を吹いているのだ。吹いたコーラは拭いておけよ。……あ、これは
 別にダジャレではないからな。まあ、面白かったら笑っても構わないが」
 そんな事を、全く表情を変えずにのたまう。
 ……一見してどこまで本気なのかさっぱりわからないのが、こいつの
特徴ではあるのだが、長年付き合いのある俺にはよくわかる。こいつは
常に全力で脇目もふらずに本気だ。当然、先の疑問も本気で聞いている
 女であるこいつ??美濃紗耶香が、男である俺に。……ため息をつきたくなる。
色んな意味で。あるいは、叫びたくなる。アホかっ!?と。
「流れとしては、男と女がどうにかなるという意味合いであろうという
 予測はついているのだが、いかんせんはっきりした意味合いは
 何故かぼかして書いてあるのでわからんのだ」
「……辞書で調べればいいんじゃないかな?」
 俺は穏当に解決しようと、そんな提案をした。無駄だとはわかりながら。
「生憎、私は辞書というものが嫌いなのだ。言葉の意味は、知らない物に
 関しては人に聞く事にしている。その事はお前も知っているだろう」
 ……そうなのだ。こいつは何故かそんな厄介な信念を持っている。
 人と人との関わりを円滑に進めるにあたって、知らない事、わからない事は
自分で調べず人に聞くという、意味のわからない信念を。
 教えてちゃんかよっ!? 俺は再び叫び声を挙げたくなる衝動をこらえた。
「というわけで、教えてくれ、和明」
 全く表情を変えないまま、小首をかしげて上目遣いで??性格や言葉遣いに
反して、こいつはチビっこだ??俺を見つめる紗耶香。
 ……畜生、やっぱりこいつかわいいんだよなぁ。
 人形のような……それも、日本人形のような、という形容がこれほど的確に
当てはまる存在を、俺はこいつ以外に知らない。
 そんな外見に加え、武道を嗜み、茶の湯や華もやるという、大和撫子という
言葉をちょっと間違えて解釈したような奴だ、こいつは。
 そんなかわいい娘から、いわば言葉責めを受けているようなもんな
わけで、俺としてはもう頭が痛いやら頬が熱いやら眉間にしわが寄るやら??
「そうだ!」
 そんな俺の心境を知ってか知らずか??というか、間違いなく知らずに、
紗耶香はとんでもない事を言い出した。
「幸い私は女で、和明は男だ。実際にまぐわいとやらを実践してみようではないか」
 ………………。
 ここが教室じゃなくて俺の部屋だったら、間違いなくベッドに押し倒してるな。
 いや、外から部活動してる奴らの声が聞こえなかったらここでもやばかったな。
 そんな名案思いついた!みたいな笑みを浮かべて俺を見るなっ!
結構ギリギリだぞ、俺の理性っ!? という叫びを三度押さえ込み……。
「……あのなぁ、紗耶香」
「どうした、和明? 何か悩み事でもありそうな顔をして」
 ありますよ。今現在悩みの種がばりばり芽吹き中ですよ。
 自覚してくれっ!? 俺は四度目の叫びを何とか飲み込んだ。
「まぐわいってのは、要するに……その、な……セックス、の事だ」
 こいつには下手に誤魔化そうとしても通じない。俺は単刀直入に??
やや口ごもってしまいはしたが??事実を教えた。
「セックス? ……要するに、性交渉の事か?」
「そうだ。和風に言うと、まぐわいっていうんだよ……ああ、恥ずかしいなもうっ!」
「何を恥ずかしがっている? 別に恥ずかしい事では無いだろう、
 そういった知識を持っているという事は」
「知識持ってるのは恥ずかしくなくても、異性にその知識を披露する
 のは恥ずかしいんだよっ!? 理解しろいい加減そこら辺っ!?」
 とうとう、俺は叫んでしまった。っていうか、叫ばないと色々と、もう、無理。
 こういう奴なんだよな、紗耶香は……昔から、そういう事に疎い上に、疎いが故に
そういう事に対する拒否感みたいなのがあんまり無い。まあ、そういう事を話す
ような友人は、俺くらいしかいないから??外見と性格のせいか、誰も彼も
紗耶香からは一歩引いた感じで接するんだよな??被害を受けている

のは俺だけだと思うんだが。
「それはすまなかった。では、私も同じように恥ずかしい思いをしよう」
「……いや、別にお前のこういう天然言葉責めはいつもの事だから、
 そろそろ慣れてはきて……って何故脱ぐっ!?」
 目の前で、紗耶香は脱ぎ始めた。しかも、素早く。止める暇も無く。
「……どうだ? 私も、それなりに恥ずかしいぞ」
 ……全裸の幼馴染が、目の前に立っている。
 なんだこのシチュエーション? エロゲ? エロ漫画?
 いや、現実だ。リアルだ、これは。信じ難いが、本当に。
「………………」
 俺は無言で、驚きのあまり目を見開いたまま、紗耶香の裸身を見つめた。
 ちっこい身体で、それなりに出るところは出て、引っ込んでいる所は
引っ込んでいて、何というか、均整の取れた体つきをしていた。
 胸の桜色の突起も、うっすらと生えている茂みも、その奥に除く筋のような秘所も、
包み隠さず、手で覆う事も、身体をよじって隠すこともせず、全て俺の目に
晒して……立っている。
「さ、紗耶香……お前……」
「知識を得たので……実際に、まぐわいを実践してみたいと、そう思ったのだが」
 少しだけ。ほんの少しだけ、紗耶香の頬に、いつも表情を変えないその顔に、
朱が差していた。こいつの無表情を見慣れている俺でなければ、その違いには
気づけなかっただろう。
 本人の言葉通り、紗耶香は今恥ずかしがっているのだ。
 ……っていうか、男に全裸晒してそれだけしか恥ずかしがらないというのも
どうなのかと思わないでもないが、それでも普段の紗耶香を知る身からすると、
それは驚愕ではあった。あの、笑みを浮かべる以外にはほとんど表情を
変えない紗耶香が、羞恥心に頬を染めているという事実は。
「……お前、自分で、何言ってるか……わかってるか?」
 喉の奥が急激に水分を失ってしまったように、上手く声が出ない。
「わかっているつもりだが」
 紗耶香の声は、いつも通りだ。特に上ずる事も、掠れる事も無い。
 いつもと違うのは、僅かに浮かんだ頬の朱色だけ。
「私が、和明の事を好きで……そして、和明と性交渉を行いたいと、
 そう思っている……そういう事を、私は言っている、そのつもりだが」
 ………………。
 ずるいよなぁ。なんだよこれ。なんだこの告白。ホントにずるいよ。
「……俺と、そういう事、したいの?」
「ああ。兼ねてから、和明とは結ばれたいと、そう思っていた。たまたま聞いた
 意味のわからない言葉がそういう意味だったという、これは天の配剤だろう」
「……俺で、いいの?」
「幼少のみぎりより共に過ごし、少し間の抜けている所のある私を
 真摯にサポートし続けてくれた男に、そういう想いを抱かないでいられる程、
 私は女である事に鈍感ではな……つもり、だ」
 ………………。
 ホントにずるいよ。こんなの、もう気づかないでいられないじゃないか。
 俺も、紗耶香の事、好きだったって事に。
「……勃っている、な。私の裸身を見て、興奮したのか?」
「……うん」
 俺は素直に頷いた。紗耶香の裸に、俺の愚息はすっかり反応して、
ズボンの下からその存在を主張していた。その存在は、他のどんな裸を
見た時よりも??と言ってもAVやエロ本で、だけど??大きく、固かった。
 好きという感情に気づいたその瞬間、さらにそれは大きくなった。
「そういうのは……知ってるんだな」
「何を言う。教えてくれたのは……和明だぞ」
 ……そういえばそうだった。というか、そういう事教えまくりで、よく
理性保てたなぁ、俺。凄いぞ俺。よく頑張った俺。だからもう……いいよね?
「これからも、もっと色々教えてくれ。私の知らない事を」
「………………ああ、わかったよ」
 俺は、苦笑いをしながら、そっと紗耶香の身体を抱き寄せた。
 細い身体の感触に似合わない、柔らかい感触をみぞおちの辺りに
感じながら、そっと頬を寄せ合い??みぞおちと同じくらい柔らかい感触を、唇に得た。
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