「んちゅっ…ちゅ……ちゅっちゅぱっ…」
 吸い合っていた口を離すと、つう、と互いの舌のあいだに混じり合った唾液の橋がかかる。
 それが切れると同時に二人は再び唇を重ねあって、また互いの口を吸いあう。
 「ぷはぁっ……」
 ようやく相手の唇と舌を開放し、クーは深く息を吐いた。
 睦みあっているときはつい情熱がこもってしまうせいで、
 ちょっと軽めのキスを、のつもりでもすぐに濃厚な接吻になってしまう。
 もっともクーはほとばしる情熱????愛情を押しとどめる気などさらさらないし、
 それによってお互いに昂ることが出来るのだから何の不都合があろうか、というのが持論でもある。
 いつもながらの濃密なキスに酔いしれ、余韻を味っているように見えるクーに、男は奇妙な違和感を抱いていた。
 普段は名刀のごとき切れ味で言いたいことをズバズバと言ってのけるクーが、珍しく何かを言いよどんでいるようなのだ。
 男は相手の目を見つめ、やさしく問いかけた。
 「どうした?」
 「いや、その…実はだな」
 紅潮していた顔をさらに紅く染めたクーの困ったような表情を見て、男はようやく得心した。
 ああ、あれは照れだったのか。
 「……今日は避妊具を付けずに愛して欲しい」
 「それって…!」
 「うむ。私の膣の中で…射精して欲しいんだ。君をもっと深く感じたい」

 願ってもない申し出に背筋に痺れにも似た何かが走った。
 男としての、否、牡としての根源的な欲求が、そそり立っていた陰茎をさらにいきり立たせる。
 かつて無い欲情が湧き上がっていた。しかし簡単に応じてもいい話ではないから、何と答えたものか。
 その逡巡が良くなかった。
 「今日は安全日だから気兼ねはしないでくれ。………いや、そういう問題ではないな」
 そう言うとクーは俯いてしまった。
 「君は初めてのときから、必ず避妊具を付けてくれていたというのに。
 君の想いを踏みにじってしまったな…………。すまない、今言ったことは忘れてくれ」
 いつもの涼しげで自信に満ち溢れた表情が影を潜め、悲しげな顔で消え入りそうに呟くクーを見て男は盛大に後悔した。どうしてすぐに答えなかったのか。断るにしたって理由を告げて気持ちだけ受け取ることも出来たはずではないか。
 それにクーがどんな想いでそんなことを言ったのか考えもしなかった。
 クーなら、単なる快楽の追求や好奇心でそんなことを言うはずが無い。
 よしんばそうであっても、それだけの筈がないだろう。
 考えるより先にクーを抱きしめていた。
 「……本当に、中に出していいのか?」
 「…男くん?」
 「本当に、いいのか?」
 「…………覚悟は出来ている。しかし私の身勝手だぞ。男くんが付き合う必要など????」
 「俺は、クーの中に思いっきり出したい」
 「……っ!」

 クーの髪を撫でてやりながら男は続けた。
 「ごめんな。さっきはちょっとびっくりしたんだ」
 「男くんは本当に私の膣の中に射精したいのか?」
 「好きな女に中出ししたくない男なんていないの!それにほら??」
 ぐっとクーの手を引っ張り、男は自身の逸物に触らせた。
 いつもそうするように、クーの手はやさしく陰茎を包み、指を這わせてその感触を確かめてみた。
 いつになく性の滾りに満ちている。まさに怒張だ。
 「あ…」
 「クーが中出しして欲しいなんてエロいこと言うからほら、こんなになってる。責任取ってくれ」
 「ん…ふっ」
 責任とってくれ、のあとに耳を甘噛みし耳たぶを舐めしゃぶる。
 クーにとってはそれほど敏感な部位ではないが、前戯で気分と性感を高めるのによく愛撫している。
 今回はいかに自分がクーを求めているか、その証としてである。
 「……わかった。君をこんなにも興奮させてしまったのは、確かに私の責任だ。
 私の全てをもって鎮めよう。いや、鎮めさせてほしい」
 「お願いします」
 どうやらいつもの調子が戻ってきたようだ。
 男は抱きしめていたクーから一旦体を離し、まっすぐ相手の目を見据えた。
 伝えるべきことが、言うべきことがあるから????。
 「ただこれだけは約束してくれ。もしものときは一人で抱え込まないで、ちゃんと俺に言うこと。
 二人の問題なんだからな?」
 「誓おう。??????ふふ」
 「どうした?」
 「君が恋人で…男くんと恋人になれて、君が恋人になってくれてよかった。そう思ったんだ」
 「?????っっっ」
 直球ゆえに男を悶絶させずにはおれぬ、それがクーの愛の言葉だった。
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