「おはよう、翔平」
恋人の姿を見つけ、私は寄っていってその腕をぎゅっと抱きしめた。
「柴倉っ!? 待てっ、頼むから待て」
私の胸元から腕を抜こうともがく彼。
その手には今脱いだばかりだろう靴がつかまれ揺れている。
翔平の腕の触感をじゅうぶんに堪能してから、私は腕を解いた。
なぜか翔平の頬は赤くなり、息も荒くしている。
「頼むから、せめて靴をしまうあいだぐらい待ってくれ。ホント頼む」
「翔平の腕が私を呼んだから。あ、耳赤いね、かわいい」
私は翔平の両方の耳たぶをつまむ。
「だーかーらっ、やめてくれーっ、痛っ」
翔平が逃げようとでもいうのか、顔を振るものだから、耳たぶがきゅっと伸びる。
それがまたおもしろくて、しばらくそのままつまんでいた。
まわりではほかの生徒たちが次々に靴をはきかえ昇降口を抜けていく。
こちらをチラチラと見る人は多かったが、誰も声をかけてはいかなかった。
挨拶くらいしていくべきだと思った。

私と翔平がつきあいだしたのは先週の水曜日だ。
私が翔平を好きになったので告白した。
教室での告白だったが、顔を真っ赤にした彼がすぐ私を引っ張って
ひと気のない渡り廊下まで連れ出してしまった。
後で尋ねると、どうやらほかの人に聞かれるのが嫌だったらしい。
壁を足で蹴りながら、私の好きなぶっきらぼうな口調で翔平は告白に応じてくれた。

翔平の、男の子らしいところが好きだった。
お弁当をおいしそうにもりもり食べる翔平。
男の子どうしで小突きあい笑いあっている翔平。
掃除のとき、じゃまな机や椅子を蹴ってどかす翔平。
新米の先生のぎこちない授業中、先生に気さくにしゃべりかけて場をなごませた翔平。
眉毛が太くて濃い翔平。
サッカー部に入った翔平の練習風景を放課後ずっと眺めていたこともある。
私は翔平を好きなんだと思った。
好きだと思ったら、独り占めしたくなった。
翔平の身体をほかの人にとられたくない。
だから、翔平とつきあおうと思った。

クラスメイトには、一年初のカップル誕生だよ、などと言われた。
確かに、私たちがこの高校に入学してまだひと月くらいだ。
告白に応じてもらえた私は幸せものなんだな、と思う。
そして、これからもっとたくさんの幸せが待っているんだと、今日も朝から嬉しい気分になるのだった。


昼休み、私はお弁当を持って翔平の前の席に向かい、机を動かして翔平の席にぴったりくっつけた。
つきあいはじめてから、お昼は一緒にお弁当を食べることにしている。
「そのコロッケ半分ちょうだい。玉子焼きも半分。あとひじきを半分とミニトマトが一つほしい」
翔平のお弁当箱をのぞきこんでそう言い、お皿がわりにお弁当箱のふたを差し出す。
翔平は「ああ」と答えてそれらのおかずを載せてくれた。
お返しに私もおかずをいくつか選んで翔平にあげる。
おかずの交換は、恋人関係の証だ。
告白した当日はなぜか嫌がっていた翔平も、今ではちゃんと応じてくれる。

自分のお弁当を食べながら、翔平の食べる様子を見ていた私は、それを見つけた。
翔平の口元についたご飯つぶ。
気づかずお弁当を頬張っている顔に、チャームポイントを添えている。
「翔平かわいい」
私は立ち上がり、机をすばやくまわりこむ。
焦ったようにこちらを見て椅子を退きかける翔平。
その頭に手をまわし、かがみこんで、すばやく顔を近づける。
「ま、待てっ……!」
せっぱつまった声の響きを耳にしながら、翔平の口元のご飯つぶを、唇で拾った。
肌のぬくもりを唇に感じた――その次の瞬間、私の身体は力強い手によって押しのけられていた。
バランスを崩し、おしりからストンと床に落ちる。
「翔平?」
「あ……あ、わりぃ……」
私を押しのけたのは翔平の手だった。
そんなことをされる覚えがないので、ちょっとショックを受ける。
翔平は狼狽したように口のあたりをもごもごさせ、手を出して私を起こしてくれた。
「あ……あの、な……。せめて、いきなりはやめてくれ」
私から目をそらしたまま、真っ赤な顔でそうつぶやく。
かわいいな、とあらためて思いながら、私は口に含んだご飯つぶをごくんと飲みこんだ。


「翔平、今日の放課後セックスしよう」
私がそう声をかけたのは、午後の休み時間のことだった。
身体がムズムズしていた。
肌が人肌と触れあうことを求めていた。
こんなことは、翔平とつきあいだしてから初めてだ。
今すぐどうにかしたいと思ったが、さすがに学校でセックスをしようとするほど私は思い切りが良くはない。
それに、そういうことは落ち着ける場所でしたいのだ。
諾か否か、すぐ答えが返ってくると思っていたが、翔平は私の言葉に、
なぜか顔を真っ赤にして唇を震わせている。
そして気がつくとまわりが静まりかえっていて、「柴倉さんが」「おい、柴倉が」といったひそひそ声が
そこかしこから聞こえてきた。
なぜか注目されているようだ。
「しばくらぁっ……!」
やっと翔平が言葉を発した。
そして私の腕をつかむと教室の外へ引っ張り出す。
私は翔平の意図がわからないまま、おとなしく廊下を引っ張られていった。

「柴倉、頼むから、ホントに頼むから、まわりを見てからしゃべってくれ」
ひと気のない渡り廊下まで来て、ようやく翔平はつかんだ腕を離してくれた。
「つーかあのときもそうだったじゃねーか。先週の。
 柴倉マジでやってんのか。なあ、あんなこと言ってまわり気にならねぇ?」
翔平の顔はまだ真っ赤だった。
「何を言ってるの? 私はただ今日の放課後の約束をとりつけようとしただけだよ」
「だーかーら、セ、セックスとか、人前で言う言葉じゃねーだろ」
そう口にして足で校舎の壁を蹴った。
サッカー部だからか、翔平はよく物を蹴る。
そこが私の好きなところのひとつだ。
「そうかな。で、今日の放課後セックスの相手になってくれる?」
翔平は足元に視線を落としたまま、しばらく沈黙した。
「迷ってるの? 嫌ならあきらめるけど」
悪い答えを覚悟して私は答えをうながす。
「……嫌じゃねーよ。わかったよ。相手になるよ」
「ありがとう」
喜びが胸の中にあふれる。
翔平といっぱい触りあえるんだ。
翔平と裸の肌を触れあわせることができるんだ。
私は翔平にきゅっと抱きつき、その肩口に顔をこすりつけた。
「放課後、楽しみにしてるね」


「ここ寄ってこーぜ」
そう言われて帰りに立ち寄ったのはコンビニだった。
部活を休むと連絡を入れた翔平と待ち合わせての一緒の帰り道だ。
なにか買いたいものでもあるんだろうか。
疑問に思う私をよそに、翔平はまずペットボトルの紅茶を手にする。
そして日用品の棚のあたりをうろうろしていたかと思うと、意を決したかのように小さな箱をつかみ、
まっすぐレジへと向かう。
「これ何?」
私は興味を覚えて、その箱を翔平の手から奪った。
「ちょ、待てっ」
「ええと、ゴムじゃないコンドーム……」
「バカっ、なに読んでんだっ!」
翔平が腕をつかみ、箱を無理やりもぎとる。
「痛いよ、翔平」
「バカっ、名前呼ぶなっ!」
レジの前に立った翔平の耳が赤くなっている。
それよりも。
「ね、コンドームって何だっけ?」
どこかで聞いた気がするのに思い出せない。
だから尋ねたのに。
私の問いに、翔平は答えてはくれなかった。

お会計を済ませ、コンビニを後にする。
そこでようやく思い出した。
「コンドームって、避妊するときに使うものだよね。良かった、やっと思い出せた」
「今まで考えてたのかよ」
「ね、それって必要なの?」
翔平の歩みが止まった。
「な、何言ってんだよ。必要かって。柴倉、その、ちゃんと考えて言ってるか?」
「何を?」
「何をって……だから、そういうことするんなら必要だろ」
翔平が声を荒らげる。
手にしたコンビニの袋が揺れる。
「あー、もういい。てか、うちに帰ってから話そうぜ」
私は釈然としない思いで、翔平の隣に並んだ。


「あがって。今誰もいないから」
翔平の家は、よくある普通の一軒家だった。
二階へ上がり、翔平の部屋に通される。
ひと目見て、男の子っぽい部屋だと思った。
壁に何枚も貼られた、知らないミュージシャンのポスターが目を引く。
床に散らばった雑誌やマンガ。
机の上に積み上げられたCD。
「そのへん、適当に座っといて」
そう言い残して、翔平は階下に下りていった。

一人になった部屋で息を吐く。
そして身体を抱いて身震いする。
胸の高ぶりはさっきよりさらに強まっていた。
翔平に触りたい。
翔平と肌をこすりあわせて、ままならないこの気持ちを甘やかに静めたい。
「さあ」
私はカーテンを閉めると、制服に手をかけ、おもむろに脱ぎはじめる。
このままじっと待ってはいられないから。
ブラを取り、ショーツを下ろし、靴下も脱いで。
私は裸の肌をさらして、愛しい恋人を待った。


「柴倉、待たせた――な、なに脱いでんだよおまえ」
小さなお盆にコップとお菓子をのせて戻ってきた翔平は、ドアを開けたところで凍りついたように動きを止めた。
震えているのか、コップがカタカタ揺れている。
「コップ落ちるよ。ちょうだい」
立ち上がってお盆を手に取る。
小さなテーブルにそれを置いても、翔平はまだ部屋の入り口で立ちつくしていた。
「翔平?」
「あ、あの、……あのな。なんで脱いでんだよ」
赤らめた顔を私からそらして、ぶっきらぼうな口調で問うてくる。
「なんでって、早く翔平と触りあいたいから」
私の答えを聞いているのかいないのか、横を向いたまま、翔平は腰を下ろした。
「……とりあえず紅茶飲もうぜ。柴倉、なんか羽織ってくれ」
私が口にしたことを、翔平はわかってくれていない。
こんなにも触りたくて触りたくてしかたがないのに。
私はもう待てなかった。
「翔平も脱いで」
紅茶のペットボトルを開けようとする手をつかんで思いきり引っ張る。
引き寄せた身体の重みにゾクリと胸のうちを震わせながら、制服のボタンに手をかける。
「ま、待て、落ち着け、柴倉、落ち着けって」
狼狽した声が耳元で響く。
落ち着いていないのは翔平のほうなのに。
でも、そんなあたふたするところが翔平のかわいいところ。
「わ、わかった、脱ぐ、脱ぐから、自分で脱ぐから、だから、手はなせって、頼む」
愛しい翔平。
私の愛しい恋人。
私は翔平から手をはなすと、喉の渇きを覚え、紅茶を注いで一息に飲みほした。


「こ、これで、いいか……?」
羞恥心をにじませたような口調で、翔平が問うてくる。
その身体には、もう何ひとつ纏われていない。
片膝を立てた脚に沿うように、大人のなりをしたおちんちんがそそり立っているのを見てとれる。
「うん。ね、こっちに来て」
私はベッドの端に腰かけた。
翔平が無言で歩み寄ってくる。
「翔平、好きだよ」
少し距離をあけて座った恋人の裸の肌に擦り寄り、腕をまわして上体をこすりつける。
「大好きだよ、翔平」
そしてそのまま寄りかかり、ベッドの上に押し倒す。
なおも上体をすりあわせると、こすれた乳首に感覚が集中して、どんどん高ぶってくるのがわかった。
心臓が、ドキドキいってる。
呼吸が荒くなる。
「翔平、翔平、翔平……」
手をとって、私の胸に押し当ててやる。
「こんなに、ドキドキしてるよ。翔平のことが、好きだから」


「柴倉ぁ、ちょっと、恥ずかしくねーか」
私の胸に手をおいたまま、翔平はそんなことを聞いてくる。
「何が? 裸でいるのは恥ずかしいけど、セックスしてるんだから当然でしょ」
「そりゃそうだけど、そうじゃなくて、なんつーか……」
「それより」
はっきりしない翔平の顔を上向かせ、目をあわせて言う。
「私のこと、名前で呼んで。せっかくセックスしてるんだから」
「う……。り……理緒……」
「うん、翔平」
「は、恥ずかしいって言ってるだろ。つーか名前で呼ぶのはじめてじゃねーか俺。
 心の準備ってものが……あ、おい、胸さわるな」
「翔平の乳首小さいね」
「そりゃそうだ。だからさわるなって。くすぐったいだろ」
「さわりたいから」
「ちくしょう、俺もさわるぞ」
「どうぞ」
私たちはお互いの胸をさわりあった。
翔平の手は私の胸をやさしく揉みしだき、乳首をつまんでは控えめにこすりたてる。
胸の内の高ぶりはさらに強まり、私は思わず翔平の胸に口を押し当て、しゃぶりついた。
小さな声があがる。
「柴倉、やめてくれ!」
「名前で呼んで」
口を離し、それだけ言うと、また乳首を舌で転がす。
「り……理緒、舐めるのは、やめてくれ」
せっぱつまったような口調。
でも、やめたくはない。
小さな乳首を吸いたてる。
胸をもまれ、さすられ、いじられる。
愛しい人をさわって、愛しい人にさわられてるということに、胸がいっぱいになって、
せつない疼きが、あとからあとから湧き出てくる。
けれど、それをどう解消したらいいのかわからなくて。


「翔平、せつないよ。どうしたらいいんだろう」
胸元から上目づかいに顔を見つめる。
翔平の顔もなんだか苦しそうだ。
「あー……じゃあ、下も、さわっていいか?」
「下?」
なんのことを言ってるんだろう。
「だから、ここのことだよ!」
大きな男の子の手が、指の背で私の股間を撫であげる。
「ひぅっ」
なにかがぞくぞくっと背筋を駆け上がった気がした。
「なんで、そこ、さわるの?」
「なんでって、そこさわんねーとセックスにならねーだろ」
「そうなの?」
知らなかった。
セックスって、裸で抱きあってお互いが幸せになることだって思ってた。
こんな、おしっこの出るあたりをさわるとか、全然考えていなかった。
翔平は頼りになる。
こんなことを思ったのは初めてかもしれない。
翔平がますます愛しく思えてくる。
「おまえって、実はなんにも知らないとか?」
「そうかもしれない」
「まあいいけど……さわるぞ」
また、股間をなぞられる。
指がそこに埋められたのを感じる。
そして中で動き出す。
「翔平、なんていっていいのかわからないけど、なんだか我慢できなくなりそう……」
腰が逃げようとするかのように動いてしまう。
こすれるたびにうずうずした気分が高まって。
荒い息がもれる。
とろりと何かが溢れだす。
「柴倉ぁ、すげー濡れてる……」
「ん……はぁ……名前で呼んでってば」
「理緒、おまえ、なんでこんなに濡れるんだ?」
「わからない。翔平のほうが詳しいでしょ、そういうことは」
「わかんねーって。しば――理緒のからだのことだろ」
私はもう、翔平の指に意識を集中して、与えられる感覚を余さず得ようとしていた。
翔平の肩につかまって、柔らかい中で蠢く指に腰を震わせる。


「理緒、気持ちいいか?」
いつの間にか、私のほうが下になって、覆いかぶさる翔平にさわられている。
小さく尖ったところをさすられて、思わず息をつめる。
「っ……気持ち、いいかって、わからない。ただ、すごく、敏感になってる」
呼吸が浅くなって、うまいことしゃべれない。
腰の奥がじんわりと熱くなって、とろとろ、とろとろと生温かい液体が洩れ出してる感じがする。
「俺のも、さわってくれるか?」
翔平の手が私の手をつかむ。
それが下へとおろされ、お腹の下のあたりで熱くて硬いものに手が触れる。
「なに、これ?」
おそるおそるつかむと、それはびくっと動いた。
「なにって、だから俺の……ああ、見ればわかるだろ」
言葉に従ってよく見てみる。
「あ、おちんちんかぁ。初めてさわったからわからなかった。こんなに熱いんだ、翔平のおちんちん」
「言うな。恥ずかしいだろ!」
「さわるってどうしたらいいの?」
「どうって……その、俺がおまえにしてるようにすればいいんじゃねーか」
よくわからなかったけど、おちんちんをゆっくりとさすってみる。
外側を覆った皮がくにゅくにゅと動いて、ちょっとおもしろい。
「ん……そう、そんな感じで……」
翔平がかすれた声で言う。
私の股間では、小さな尖りが集中的にいじられている。
なんでこんなに、と思うくらい敏感で、どんどん刺激がほしくてたまらなくなる。
「翔平、そこ、もっと、もっとさわって……」
重ねた身体が汗ばんで熱い。
翔平の荒い息づかいがはっきり聞こえる。
身体中の神経が股間に集まって、ビリビリしびれているみたい。
不意に、自分がどこかへ行ってしまいそうな不安を覚えた。
いじられ続けている突起に引っ張られて、身体が浮いていくみたいな、そのままどこかへ達してしまいそうな、
せつなくて狂おしい感じ。
「翔平、私をつかまえて」
翔平の腕を求めた。
抱きしめていてもらわないと、おかしくなってしまいそうで。
指が小さな尖りをはじいた。
その瞬間、私は震えた。
意識がぐうっと持ち上げられて、白く明るくなって、背筋を走る甘い信号に身体中がわなないた。
なにか叫んだような気もする。
しだいに身体が重くなっていき、やがてたくましい腕の中にいることがわかるようになってからも、
私はしばらく何も言えないまま、ただただぼうっとしていた。


「イッたのか?」
私を抱いたまま、翔平が問いかけてくる。
まだけだるくて、私は答えないまま翔平の胸板をゆっくりとさすっていた。
「おまえ、感じやすいんだな」
やっと意識がはっきりとしてくる。
「感じる……って、今みたいなののこと?」
「ああ。すっげー感じてるように見えた」
翔平の手が、私の胸をやわやわと揉む。
私の身体はまだ敏感なままで、そんな何気ない接触にさえ声を洩らしてしまう。
もっとさわってほしい。
翔平の手をつかむと、下のほうにもっていく。
「さっきのところ、またさわって。あんなふうな感じ、初めてだった。もっと感じたい」
「柴倉――あ、理緒」
翔平が低い声で呼ぶ。
指が私の中を舐めるように探る。
「おまえが、見た目だけじゃなくて、こんなエロい身体してて、すごい嬉しい。
 ただ、俺も、もう……。いいだろ、理緒」
「何が?」
翔平はときどきこういう物言いをする。
「ぼかして言わないで。はっきり言って」
「だから!」
怒ったように声を荒らげる。
「悪りぃ。だから、その、セックスしようってことだ」
「セックスならもうしてるでしょ」
「だからそうじゃなくて! 入れてもいいかってことだよ!」
「何を?」
「だーかーら! その、ち……ペニスを、膣に入れてもいいかってこと!」
目をそらして、真っ赤な顔で、翔平はそう言い切った。
「つまり、子どもをつくるってこと?」
「いや、だからコンドーム買ってきてあるだろ。おまえほんとにわかってないのか?」
そこまで聞いて、やっと話がつながった気がした。
「つまり、子どもをつくらないでおちんちんを膣に入れるのがセックスってこと?」
「いや、子どもをつくるかどうかは関係ないんだけどな。まあそんなとこだ。
 でもなんでそこらへんの知識が全然ないんだ?」
「いままでセックスしたことがなかったから」
そう答えると、翔平はあきれたように大きな吐息をついた。


にちゅ、くちゅ、と水っぽい音が聞こえる。
私の股間が翔平の指に掻きまわされているのだ。
指は襞をこすり、小さな突起にときどき触れて、膣の入り口をなぞりあげる。
私はじっとしていられないような感覚に襲われて腰を震わせ、ときおり翔平の名を呼ぶ。
とろとろと液体のあふれてくるのを感じ、それが翔平の指を濡らしていることを知ってぞくっとする。
「指、入れるぞ」
その声に続いて、いままで何も入ったことのなかった場所へ指が割り入ってきた。
通路を穿つきつい感触に、息をつめ、耐える。
それでも愛しい人の指が入っているのだと思うと、湧きおこる嬉しさは否定のしようもなかった。
「翔平、翔平……」
顔をあげ、恋人の姿を見やる。
私の好きな太い眉毛の下で、真剣な目が、私の身体の中心を脇目もふらず見つめている。
指が、私の中を行き来する。
痛みはじきに薄れて、翔平の指にからみつく私のそこが、じんじんと熱を帯びてくるのを感じる。
もどかしくてたまらない。
「指をもっと早く動かして」
発した自分の声がひどくかすれて耳に響く。
早まる指の抽送に、おさまるはずだったもどかしさがさらに煽りたてられる。
気持ちいい、とはっきり自覚した。
「気持ちいいよ、翔平……」
私のそこは、もう目いっぱいの熱をたたえて、翔平の指に喘いでいる。
されればされるだけ、求める気持ちがあふれにあふれて。
私は、自分の身体が何をほしがっているのか、はっきりと知った。
「おちんちん、翔平のおちんちんがほしい。セックスしよう」


コンドームをおちんちんにかぶせるところを間近で見た。
翔平は恥ずかしがって背中を向けたけれど、肩越しにのぞきこんだ。
翔平が好きだから、翔平のおちんちんも好き。
これが私の中に入ってくるのだと思うと、興奮で胸がざわめいた。

ベッドの上で目を合わせる。
翔平の目は心なしか潤んでいるようだった。
軽くくちづけを交わして、翔平が私を組み敷く。
足がいっぱいに広げられる。
「セックスってこうやってするんだ……」
おちんちんが開いた股間にあてがわれる。
「いくぞ」
ゆっくりと、翔平が侵入してくる。
身体を割り裂かれるような痛み。
ものを狭い中にいっぱい詰め込まれたような充満感。
「全部、入ったぞ」
翔平のおちんちんが私の中にある。
それはなんだかとても幸せな気分で、でもそれだけでは全然足りない気がして。
もどかしさに腰をよじる。
「あんんっ」
中がこすれて、思わず声を洩らした。
「痛いか?」
「そうでもない」
入ってしまうと、きつい感じはあったが、痛みはあまりない。
それよりも、いまのこすれる感じのほうが気になって。
腰を動かしてみる。
「あ、ふあぁっ」
じわりじわりと膣の壁にもたらされる刺激。
腰の奥がきゅうんとなって、もどかしさが熱を帯びて高まる。
「理緒、おまえ声がエロい……」
「なにそれ。それより翔平動いて。私だけじゃうまく動けない」


腰をぐねぐね動かしてみる。
「あ、あっ、あん、はああぁ……」
おちんちんが私の中でこすれてる。
「い、痛くないのか、大丈夫か?」
「いいから動いて。おちんちん動かして」
もっともっと感じたい。
もっともっとエッチになりたい。
翔平が腰をひく。
襞がおちんちんに追いすがり絡みつく。
腰が深く戻ってくる。
襞が巻き込まれ潜り込む。
「翔平、もっと動いて、激しく突いて」
私は声を震わせる。
「ふあぁ、いい、しょーへい、おちんちん気持ちいいよ、ああぁっ」
翔平の息づかいが耳元で響く。
頬をくすぐる荒い吐息がたまらない。
「しょーへい、しょーへいっ、あんっ、ああぁ、もっと、もっとぉ」
深く突き込まれ息がつまる。
浅くかきまわされて甘い蠕動に声を洩らす。
翔平の肌は熱くて。
私の肌も熱くて。
つながった二人の身体が世界の全てになる。
「あっ、ああ、んああっ、しょーへいっ、すごい、ああっ、きもち、いいよぉ」
これがセックスなんだ。
私はこれをしたかったんだ。
気持ちよくて。
あまりに気持ちよくて。
頭がぐちゃぐちゃになって。
とろける。
「しょーへい、わたっ、わたしっ、おかしく、なるっ、ふああぁ、ああっ」
翔平が私の中にいる。
翔平の全てが私と融けあう。
お腹の奥が疼く。
「しょーへい、しょーへいっ」
もっと来て。
もっと中へ、もっと奥へ。
「ああ、んっ、きゃうっ、きゃあぁ、ふあああああっ」
はじけた。
膣だけが別の生き物のように、喘ぎながら、受け入れて。
あとの部分は、溶けて、はじけて、四散して、ばらばらになって。
私は愛しい肌にぎゅっとしがみついた。
熱い身体。
大切な人。
快感のかたまりみたいな腰の奥から、感覚がしだいに身体に、頭に戻ってきて。
余韻に身体を震わせながら、私は翔平の腕がしっかりと自分を抱きしめてくれているのを感じた。

「セックスって、すごいね」
息を整えながら、私はつぶやく。
「こんなに気持ちいいものだったんだね」
翔平は私の横でやはり仰向けになって目を閉じている。
上体を起こして、そっと口づけをした。
「翔平も、セックス、気持ちよかった?」
問いかけに、けだるげに「ああ」と返事がかえる。
「またセックスしようね。したくなったら言うから」
その言葉に翔平が目を開ける。
「学校では言うなよ。頼むから」
「なんで? 学校で会うんだから学校で言うよ。それとも翔平はセックスしたくないの?」
「いや、だから、人に聞かれるだろ」
「聞かれちゃダメなの? 聞かれたくないことなの、セックスって」
「当たり前だろ」
「なんで?」
「……恥ずかしいだろ。おまえもあんまり、その、セックスとか言うなよ」
「恥ずかしくないと思うんだけど」
翔平の言うことは、やっぱりよくわからない。
けれど。
「おまえって、ほんと変な奴だな……」
呆れたようなその口調がなんだかとてもかわいくて、世界中のなにもかもを好きになりそうな、
そんな満ち足りた気分を私は覚えた。
「翔平、好きだよ、ずっとずっと好きだよ。またセックスしようね」






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