「秋津 絆、君に話がある。」
そう俺の隣で切り出してきたのは
一風変った口調で喋るクラスメイトの唐島 空(からしま くう)だった。
初夏に入りうだるような暑さもなんのその
エアコン完備の教室で魅惑の昼休みを堪能していた時だった。
秋津「ん、今昼飯食べてんすけど・・・・。」
空「ならば、そのまま聴いて欲しい。大事な事なんだ。」
普段から無表情で冷静なイメージの彼女なのだが
今日ばかりは口調の節々に少し緊張感があるようなイントネーションが少し気にかかる。
つややかな黒髪を一撫でし、凛とした目でランチを堪能している俺を見つめる。
秋津「………?」
胸に手を置き一呼吸。
意を決したかのようにその口がゆっくりと開いた。
空「君のことが、好きだ………。愛している。」
秋津「ぶっ!」
空「付き合って欲しい。」
秋津「ちょっ!げほっ!!」
こいつ、TPOってもんを知らないのか………。


空「ほら、絆。あーんをしてくれ。」
秋津「………あの、空さん?」
空「あーん、だ。あーん。」
秋津「いや、そういう事ではなくて。」
空「では、どういうことだというのだ?」
差し出していた箸を引っ込めてこちらの顔をじっと見つめる。
あれから数日たって、周りもそれなりに馴染んできた頃
空の暴走は、日増しにスピードを上げていっている。
秋津「たしかに、俺は認めた。だが、この甘ったるい空間はなんだ!」
空「なんだとは………ひどいな、私と君の間に冷えた空間なんて要らないと思っているのだが?」
秋津「これだけ甘ったるい空間を人様の前で披露するのはどうか?とか思わんのか………」
空「つまり………、二人っきりでなら良いという事なんだな?絆。」
二人っきりといった言葉に周りのクラスメイト、主に女子の間から
「いやぁねぇ・・秋津君って。」
「実はふたりっきりがよかったなんてツンデレもいいところだよね………。」
「いや、あいつはやるときはやる男だから。」
なんて、お情けの欠片も見えない言葉がひそひそと聞こえてくる。
秋津「まぁ、とにかく二人っきり云々は兎も角として、少しは自重してくれると有り難い。」
空「むぅ………、君は案外恥ずかしがりやなのだな?付き合って見える一面もあると聴くが
  いやはや、ちょっとばかり可愛いと思ってしまったよ。」
こちらをじぃっと見つめて新たな発見に感動していたところに
空「しかし、二人きりだと私が我慢できなくてエッチしたくなるかもしれない………。」
と、ぐっとスカートを両手で握りながら
こんなストレートな台詞を教室でのたまってくれるので
慌てて口をふさぐのもすでにクラスメイトの間では毎度の事の扱いで。
付き合い始めて自分が振り回されてる現状に納得いかない事実も
今では、当たり前の事かのように容認してしまっている自分がいる。
好きで付き合ったわけではない、成り行き上仕方なく。
そんな言い聞かせてきた物が、好きになりつつある。もしかしたら好きだったのかも?
等といった考えに転換されてきているのも、また事実だったりする。


空「なぁ、絆?」
秋津「ん?どうした空。」
季節はさらに流れて秋も半ばを差し掛かった頃。
空が数歩前にでて声をかけてきた。
帰宅賂は夕日に照らされて鮮やかな橙色の回廊となり
その光に照らされ、こちらを向いた空の表情は見えなくて。
周りの雑音が次第に聞こえなくなっていく………。
現実的にありえないこの感覚は、意図的に作られた空の領域
招かれた俺は、ただ空の次の言葉を待つゲストで
顔が読めないだけに、その言葉がとても気にかかる。
空「君は、私の事が好きか?」
秋津「………?」
空「正直に答えて欲しい。YESかNOかだけでもいい。」
突然の事に驚く。なにかしら俺の態度がいけなかったのだろうか?
今までどおりふざけ合ってワイワイやっていたつもりだったのに。
秋津「ど、どうしたんだよ………。」
空「私は迷惑か?」
秋津「?!」
空「はは、君は正直者だな。口で語らずとも顔で教えてくれる。
  故人曰く 顔は口ほどに物を言うとあるが、なるほど確かにそうかもしれないな。」
秋津「ちょっ、ちょっと待て。いきなりの事で驚いただけだって。本当にどうした?」
顔が見えない事が悔やまれる。しかし虚をつかれて好きかどうか即答しろといわれると
一瞬びっくりするのが人の反応としてはもっとも多いのではないのか?
空「今まで、君に告白してから毎日一緒に過していたが
  君が心から楽しそうに笑っているのを一度も見たことが無い気がする。言うなれば不安なんだ。」
秋津「心から………。」
空「いきなりの形だったが故に、一枚の壁を隔てて付き合っている。そんな感覚に陥る時がある。
  しかし、これは私のミスであり絆に対してどうこう言えるレベルの物ではない。
  だが私も好きな人に告白する等といった事は初めてで、尚且つ性格と口調もこのような感じだ。
  どうしていいか分からず遂あのような形をとってしまった。」
秋津「…………。」
空「君にとっては、はた迷惑な話であったんだろう。
  しかし私にとっては抑えきれない気持ちで、君に知ってもらいたかったんだ。」
秋津「だから、空………それは。」
空「上辺………か?」
秋風が体にかすかな寒さを与えてくる。
二人の間に冷たい空間等ない、そう言ったのは空自身だ。
しかし、実際はどうだろうか?今その空間を作り出し感じさせているのは
言った本人である空自身だ。
秋津「つまりあれなのか?嫌そうな顔ばかりしてるってこと?」
空「すまないが、そういった解釈になってしまうな。」
秋津「嫌ってるって意味だよな?」
空「いや、それは違うっ。」
秋津「いや、だって実際、空は上辺とか俺に言ってるわけだし
   たしかに、色々とこうしてくれとかは言ったけどさ
   空が今全部いったのまとめると、そういう意味じゃないか?」
空「…………っ!」
秋津「一枚隔てて接してるのは一緒ってことはない?」
空「そんなことは無い!私は絆の事が本当に好きで。」


秋津「だから、空がそれだけ一途に思ってくれてるのが分かるから
   俺だって空の事をもっと知りたいし、空の事好きなんだけど。」
空「私は、好きなんだ………絆の事が、凄く………。」
秋津「うん。」
空「二年前に、私の目の前で後輩が落としたプリントを拾って集めて先生の愚痴を聞いていた時から。」
秋津「そんなことあったっけ?」
空「それが、始まりだからな。好きになった人との出会いなんて忘れたくない。
  それに、一緒のクラスになったときに声掛けてくれたのも絆が最初だった。」
秋津「それは覚えてるな。空が少しうろたえてたのは覚えてる。」
空「当たり前だ、私の気持ちはすでに絆にあったんだからな。」
秋津「そ、そうだったのか。」
空「大好きなんだ、絆の事が。
  ただ、絆の事になると頭が真っ白になって考えられない。
  だから迷惑かけているんじゃないか?嫌われているんじゃないか?と思ったんだ。」
秋津「なるほどな、さっきも言ったけど空の事好きだぞ?少しずつだけどな。」
空「少しずつ………。」
秋津「そう、空の事を知るたびに。
   俺に告白したやつはこんな子だったんだな?とか新しい発見があってね。」
空「私と同じ発見なわけだな………?」
秋津「ちょっと違う、スタートが100をMAXとして空が10としたら俺なんて0に近い。」
空「0に近い………。」
秋津「あー、だからって嫌いだったわけじゃない。
   空が好意を持ってくれていた分の差分なわけだから。」
空「つまりは、温度差というわけか。」
秋津「正解。な?壁なんてないだろ?」
空「………ない。」
秋津「嫌いだと思うか?」
空「うっ………ぁ………思わないっ。」
秋津「俺だって空の事大好きなんだぞ?」
空「でも、不安でたまらなかったんだ……ぅあ……あぁ……。」
秋津「泣くなって。」
空「こんなの初めてだからとまらないんだ。嬉しくて………っ。」
近寄り頭を撫でると、胸元に顔をこすりつけて声を殺しながら
涙をとめようと頑張ってる。
なるほど、お互い初めて同士
壁に見えて不安になるわけだ。
こいつの場合一途でこんな性格だったんだから
その高さも計り知れなかったんだろう。
ひとしきり泣き終えてようやく落ち着きを取り戻した空の顔は
少し目元が赤かったが、いつもの無表情に戻っていた。





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