《まひろん》
「勇一」
 朝の通学中。
 坂道の途中で突然、誰かが僕を呼んだ。
 女子の良く通る声。
 僕を名前で呼ぶようなクラスの女子はいないはずだけど……そう思いながら振り返った。
 声と同じ美しい女の子が、いきなり僕の胸に飛び込んできた。
 朝に似合う爽やかな香りの髪。長さは肩くらいだ。
 僕は焦って真っ赤になってしまう。
 周りにいた他の生徒たちが、じろじろと僕たちを見ながら通り過ぎる。恥ずかしい。
 一体何が起きてるんだ。
「忘れたの? 酷いよ」
 彼女は顔を上げた。
 すごく整った顔立ち。大きなアーモンド型の目。鼻筋が通っていて唇の形も良い。
 だが、まるで人形のようにその表情は乏しかった。
「真尋よ。上条 真尋(かみじょう まひろ)」
 その瞳の光はわずかに僕を責めているように感じた。
 真尋……まひろ……?
「あ! おまえ、あのマヒロンか?!」
「その呼び方はやめてよ」
 急に声が低くなる。表情の変化がほとんどないだけに、よけい怖い。
「でも、思い出してくれたから良しとするか」
 彼女の声の高さが元に戻った。
 僕はとりあえず、彼女から離れて歩き出した。
 すると、ふいに彼女は僕の腕を取って組んだ。なんて密着。ドキドキする。
「今日から一緒に登校しようよ」
 彼女はそう言うとさらに僕の腕をぎゅっと掴む。
「えええ?! それってどどどういう……」
 彼女の発言にも慌てたがそれよりも!
 こ、このひじに当たる……ほんわほわした感触はッ?!
 これがあの伝説に聞く“女子の胸”というものかッ?! そうなのかッ?!

 むう、これはけっこう……。
 健康な男子にはヤバイですよ? 特に下半身方面で。
 僕は腰が引けて、動きがぎくしゃくとなってしまう。
 僕は気を紛らわすため話を振った。
「マヒロン……いや真尋、いつ日本に帰って来たんだ」
「ちょっと前よ。わざわざ勇一の学校探したんだから」
 え、それって……。
 ふいに彼女が僕から離れて目の前に出る。
 くるりと振り返ると、わずかに表情が軟らかくなった。
「勇一、昔から大好き。付き合って」

 時が止まる。
 有名なマンガでそんな力を持った悪役がいたな。
 その間に攻撃されるんだ。
 やがて時は動き出す。

「ぐはぅ!」
 案の定、物凄い量のヒットポイントを奪われた。
 周りの生徒達は一気にヒートアップしている。
 僕たちをはやし立てたり、呪いの言葉を吐いたり。
 ああ、顔が熱い。息が切れる。鼓動が激しい。世界がぐるぐる回る。
「勇一。これ、使って」
 真尋がふいにハンカチを差し出した。
「え……」
 僕は顔に手をやると、指が真っ赤に染まった。
「な、なんじゃこりゃぁぁ?!」
 鼻血だった。

――

以上ー。




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